日本保全学会 西日本支部 設立趣意書

日本保全学会 西日本支部 設立趣意書

日本保全学会は2003年10月3日の設立以来、それまでの、日本機械学会の軽水型原子力プラントの保全に関する調査研究結果を踏まえ、さらに広く、産業設備などの構造物全般を対象に、保全の専門家として、保全の学術化に取組んでまいりました。

この間、学術講演会の開催、セミナーの実施、学会誌の発行などの学術活動を展開し、産学官それぞれの立場から保全の向上に取組んでまいりました。これまでの成果はホームページなどに公開し、社会に対しても広く保全の重要性を発信してまいりました。また、原子力規制庁と電気事業者との間の意見交換の場を創出したことで、規制行政の点においても、原子力プラントの安全に貢献できたものと自負しております。2008年には東北・北海道支部を設立し、同地区の保全に携わる研究者・技術者に対し、地域に密着した連携の場を提供してまいりました。

発電設備における「保全」はその信頼性や安全性に密接に関連することから、運転保守管理に、体系化された保全の取組みが反映されれば、社会的受容性が一層向上し、原子力発電に対する国民の安心感や信頼感をより一層醸成するのに有効です。近年は、IoT/ビッグデータ/AI等の革新的技術の進歩を背景に、発電設備の保全にも高度情報通信技術の導入を積極的に推進しようという気運が高まりつつあります。保全の諸活動において、人とAIをいかに共生させ、いかに適切な意思決定を行うかという新たな問題提起もなされ、保全学における新たな展開も図られつつあります。こうした経緯を踏まえ、今後は、日本保全学会のこれまでの活動を基礎に、より多くの方々に日本保全学会の活動に参加していただく必要があると考えております。

現在、我国の商業用原子力発電所33基のうち、16基が西日本地区(北陸、関西、中国、四国、九州)に設置され、総発電容量は15,334MWに達しております。これは、我国の商業用原子力発電所全体に対して、基数で48%、発電容量で46%と大きな比率を占めています。福島第一原子力発電所の事故後、未だ多くの国内プラントは再稼働を果たしておらず、ますます地球温暖化対策の遅れが危惧されております。このような事態を招いた主な原因は、新規制基準適合審査の対応に時間を要したことによるものですが、そうした状況の中でも再稼働を果たすことのできた9基のプラントは、すべて西日本地区に設置されています。新規制基準適合審査の合格がすなわち再稼働を意味するのではなく、立地地域自治体等との協議も進めていく必要があります。今や原子力の安全と保全は、専門家間だけでなく、行政や地域住民に対して、その説明性の向上が求められていると言えます。

日本保全学会は、これまで、科学技術の面だけでなく、社会学的な側面も含めた保全のありようを模索してまいりました。原子力プラントに対する革新的技術の導入や再稼働に関わる諸問題を前に、保全学は、今、新たな展開を迎えつつあります。この新たな展開が、原子力エネルギーの有用性やその価値の再確認につながり、そして、我国の産業界の発展に学術的な側面から寄与することが重要です。この機に際し、西日本地区には、この地域ならではの議論を行う土壌があります。地域に根差した保全の学術的議論の場を提供するために、ここに、西日本支部を設立するものであります。

令和元年10月1日