第5回 保全セミナー

- 軽水炉における高経年化対策とその展開 -

第5回保全セミナー

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副題:発電所における経年劣化管理

発行

2008.05.24

価格

10,000円(税込み)

本セミナーでは、「軽水炉の高経年化対策とその展開」をテーマとして取り上げる。我が国で稼働している55基の軽水炉プラントのうち、平成20年2月までに13基が運転開始から30年を超えており、約30基の運転期間が20年以上となっている。運転開始から長い年月を経た原子力発電プラントが、今後も継続して安全性を確保しつつ基幹電源としての役割を果たしてゆくためには、複雑システムとしての軽水炉の効果的な保全を可能とする幅の広い技術基盤が必要である。科学的合理性を持って、軽水炉の安全を長期間に渡って確保するために、安全基盤研究の実施や規格基準類の策定を進めることが要請されており、産官学と学協会の役割分担と有機的な連携や国際的な協力体制の構築もいっそう重要になると考えられる。

「高経年化対策」という用語を分析すると、いくつかの意味合いがあることがわかる。その一つは、経済的な合理性を求めて軽水炉プラントを長期間に渡り活用してゆくためのマネジメントシステム構築である。二つ目は、国民の視点に立脚した長期間の安全運転を確保する規制の仕組みづくりであろう。三番目は、軽水炉プラントの機器機能劣化をもたらす部品・材料の経年劣化に関する体系的な管理である。
現在、原子力発電所に対する検査制度の改善に向けた検討が進められ、「保全プログラム」に基づく保全活動の的確な策定が要請されている。高経年化対策はプラント運転初期からの保全活動に組み込まれるべきものであり、保全プログラムの基本的事項を構成する柱の一つであると考えられるようになってきた。このためには、経年劣化事象の進展傾向の特徴を明らかにした上で、これに的確に対応した保全を実施することが求められることとなる。14基の実績を有する高経年化技術評価の過程で培われた膨大な技術情報基盤は、機器・部位ごとの経年劣化事象を体系的に整理するために活用することが可能である。
このような観点から、我が国の新検査制度における「高経年化対策」について、改めて知識情報基盤の構造化や規格化の進捗を踏まえ、位置づけを明らかにすることは極めて有意義であると考えられる。さらに、諸外国の情報基盤や規制制度との体系的な比較も可能となっている。以上のような視点で、本セミナーの第1部は構成されている。

軽水炉の高経年化に対応した幅広い課題は、「高経年化対応技術戦略マップ」において、技術情報基盤の確立、安全基盤研究の推進、規格基準類の整備、さらに現場における保全の高度化の4大項目として整理され、産官学が各々の役割分担に基づいて、着実に課題解決を進めようとしている。第2部においては、技術開発に関する有機的な連携基盤の形成について、産官学各々の立場から講演をお願いしている。

第3部は、原子力発電所における経年劣化管理について、現状を分析し、現場における課題を明らかにするため、パネルディスカッションを企画した。発電所の現場において経年劣化管理に関わる「技術」と「人」と「情報」をいかに効果的に運用するべきか、原子力発電所の安全と地元住民をはじめとする安心にいかにつなげてゆくのか等々について、活発な議論が行われることを期待している。

ご講演をお引き受けいただいた方々、座長をはじめとして本セミナーにご協力いただいた方々、そして本セミナーにご参加いただいた方々に厚く御礼を申し上げる次第である。また、日本保全学会事務局にはセミナーの企画・運営に並々ならぬお世話になった。ここに感謝の意を表する。

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