第1回 保全セミナー

- 高経年化と保全 -

第1回保全セミナー

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2005.11.11

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日本保全学会は平成15年10月に発足しました。以来、学会誌の発行や学術講演会、研究会の主催など精力的に活動を推進してきました。この度、活動の新たな展開としてセミナーを開催する運びとなりました。
社会が安定し環境問題への対応が重要課題となってきている中、あらゆる分野において「保全」の重要性が大きくなってきています。原子力発電所をはじめとする大規模な生産設備や人工構造物に対しても、これまでの生産、建設中心の取り組みから、それら設備の信頼性・安全性を保ちつつ、かつ経済的合理性に軸足を置いて、長期に生産活動を稼動させ、社会に貢献させるという「保全」中心の取り組みへの時代ニーズが増大してきていると言えます。
従来から、保全活動は広く一般産業において、設備や機器が存在する限り継続して実施されてきた汎用の産業活動の一分野であり、投下される費用や人材も膨大なものであります。しかしながら、この分野は現場経験や実績の積み上げをもとにした保守管理者や保守技術者の個人的資質に頼り、進められてきたところがありました。
このような状況を踏まえ日本保全学会は、広く「保全」を体系的にとらえ、その構造を明らかにすることを目標に活動を展開してまいりました。より体系化された保全学の手法を用いれば、点検・検査に、科学的・工学的な理論を適用して機器の点検周期や点検方法を定量的に扱うことができ、リスク管理手法を導入して最適化を図ることが可能となります。すなわち合理的な保全の計画・立案を可能とする方策を確立することができ、それにより構造物の健全性を、より高いレベルで維持しつつ、システムが必要とする機能を必要かつ十分なレベルで達成することができるようになります。その結果として、コストリスクをミニマムにする競争力の増強も期待されるようになります。一方、このような設備に対する種々の保全活動は信頼性と安全性に密接な関係を有するために、運転管理面において体系化された保全への取り組みが反映されることで、社会的受容性が強化されるようになります。特に原子力発電システムの場合においては、国民の不信感を軽減し、単なる技術的安全性に留まらず、安心感と信頼感を醸成するのに有用となることが期待されるものです。
この保全の体系化が具体的に目指すのは、既存の確立された機械、電気、原子力工学、さらには社会学、経済学に属する学問分野を“保全という側面”で統合して新しい論理体系を構築するものであります。それは、従来の工学分野での取り組みでは十分とはいえない実時間軸を包含した“人間の行動”の観点、つまり人間工学的、社会学的観点を加えた体系化を追究するものであります。
すなわち、一つは直接的な保全事項である、「劣化事象」、「事故発生予測・分析」、「検査」、「規格」、「保全措置」など、より設備運用の現場に近いものを「保全工学」や「保全科学」などの論理体系と結びつけ、曖昧な保全事項を論理的に扱うことができるようにするものであります。
一つは保全に関わる「実時間軸を含めた“人の行為”」の軸の要素である、「設備計画」、「建設」、「運転」、「補修」、「廃止・廃棄」、「措置」の領域おいても、同様な体系化を進めることであります。
以上の理念を基に、日本保全学会の活動として、産学協調を図りつつ、研究の実施・調査を中心に国内外の発表会や諸外国の協会ならびに関連の学会活動などを学会誌で紹介し、加えて学術講演会を開催し、ホットな話題の解説や取り組み姿勢の提案などを行ってきました。
今回、更なる活性化と「保全」活動の啓発を目的に、“日本保全学会セミナー”を開催する運びとなりました。これにより、取り上げました話題についてはもちろんではありますが、広く「保全」や「保全学」、また種々の保全活動を、より多くの方々にご理解いただき、皆様方の活動に役立ていただければ幸甚でございます。

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