日本保全学会学術講演会も無事に第22 回を迎えることができました。今回の開催にあたりご尽力をいただきました関係各位、ならびにこれまで本学術講演会を支えてこられた皆様に、心より御礼申し上げます。
近年、世界的に原子力の重要性が改めて認識され、新たな局面を迎えています。エネルギー安全保障の強化と脱炭素社会の実現という両立課題のもと、原子力は安定かつ低炭素な基幹電源として再び注目されており、各国で新設・リプレース・運転延長を含む多様な取り組みが進展しています。加えて、電力需要の増大や地政学的リスクの高まりといった状況も、この潮流を後押ししています。
国内においても、再稼働の進展にとどまらず、既設炉の長期運転を見据えた制度整備や、次世代革新炉の開発、サプライチェーンの維持・強化、人材育成といった取り組みが具体化しつつあります。また、デジタル技術やAI の活用による設備診断、予知保全など、保全のあり方そのものも大きく変革しようとしています。
しかしながら、こうした動きは単なる拡大ではなく、安全性の一層の向上と社会からの信頼確保を前提とした「質的進化」を伴うものでなければなりません。廃炉、放射性廃棄物処理といった課題への継続的対応とともに、日々の運転における確実な安全確保が不可欠です。この基盤を支える中核的分野こそが、保全学であると言えます。
さて、第22 回の主題は「原子力“再”ルネッサンスを支える保全学」です。原子力利用の新たな展開を真に持続可能なものとするためには、設備の健全性を確実に維持し、トラブルを未然に防ぎ、長期にわたる安全・安定運転を実現する保全の高度化が欠かせません。とりわけ、デジタル技術の導入による保全の高度化と、現場に根差した知見や技能の伝承・融合をいかに実現するかは、重要な論点となります。
本講演会が、保全を巡る課題とその解決に向けた知見を共有し、原子力“再”ルネッサンスという新たな発展局面を支える学術的・実務的基盤を一層強化する場となることを期待しております。また、会員の皆様の研究・実務の成果が次なる発展へとつながる契機となれば幸いです。