終了 第2回「検査・評価・保全に関する連携講演会」

趣旨工学には縦系列の学問と横系列の学問があると考えられる。原子力工学や建築工学や造船学などは縦系列の学問であり、金属工学や化学工学や溶接工学などは一般的には横系列の学問と考えられる。例えば造船学では、船の基本(性能)設計に関連する分野には流体工学や構造工学や材料工学がその基礎にあたり、その他エンジンに関連する工学や貨物の特性なども考慮されなければならない。このような船舶を設計し、建造する技術も造船学の一部である。また船舶を運航するためには、気象・海象を考慮した船舶の運航ルートの情報も重要である。このように縦系列の工学はその工学が対象とする機能の全体を纏め上げる総合工学が求められている。一方、溶接工学を考えてみよう。溶接工学は造船業でも自動車産業でも電力でも利用されていて、それぞれの縦系列の中でも重要な位置を占めている。ところでこの溶接工学の基礎は各縦系列の分野の共通技術であるから、縦系列の学問領域とは独立に横系列の学問領域で研究・開発される場合も多い。大学の工学部における教育・研究を歴史的に考えても、初期の時代には実用的な縦系列の学科が設置され、その後にそれらに横通しの学問技術の学科が設置されているようである。ところで元東大総長の吉川弘之先生は、「一般設計学」と称して原子力の設計でも建築の設計でも造船設計でも、それらに共通した「一般設計学」を構築する努力をされた。この試みが完成されれば、「一般設計学」は「横系列の設計学」になり、「設計とは何か」というより一般的な共通な議論を展開することが出来るようになる。これこそ「工学の技術の学問化に寄与する」と考えることが出来る。時代は縦系列技術から横系列学問への移行を要望しているのかも知れない。

 さてこの議論を「検査・評価・保全」の分野にあてはめてみよう。下記は第1回「検査・評価・保全に関する連携講演会」の趣旨である。「構造物や機器の健全性は、その状態の把握や欠陥の検査、結果の評価と保全活動によって担保されています。わが国では、産業界や学協会を中心とした研究者や技術者の長期にわたる努力によってこの分野の技術についても格段の進歩を遂げてきました。しかしながら、これまでの進歩は、各産業分野の縦割りの中で検査技術、評価技術、保全技術が個別に進歩してきたといえます。したがってこれらの技術を個別に取り上げている学協会は多いものの、学協会間における情報交換は乏しいのが現状です。

 以上のような情勢を背景に、従来縦割りで個別的であったこれらの技術分野に関わる学協会が連携して講演会を開催することにより、互いの技術が融合されていくことが望まれます。このような視点から未来に向けた新しい試みとして、平成20年1月に第1回「検査・評価・保全に関する連携講演会」が開催されました。

 さて今回は第2回「検査・評価・保全に関する連携講演会」にあたります。今回以降は検査・評価・保全に関する連携をより具体的に推進していくことを心掛ける努力をしたいと考えております。今回の具体的な成果は主催団体として日本保全学会の他に日本設備管理学会が参加されたことです。日本設備管理学会は「設備管理の分野にスポットを当て,ものづくり分野に関する組織・人々の存在価値を高めることを目指す学会」です。検査・評価・保全に関連した学協会がこのような視点から新しい未来に向けて今後共協力して、連携の実を挙げていきたいと考えます。最後にこの連携講演会を開催するにあたり、実行委員並びに関係各位に多大なるご支援・ご尽力をいただきました。ここに心からの感謝を申し上げます。

第2回「検査・評価・保全に関する連携講演会」 実行委員長
(財)溶接接合工学振興会  野本 敏治
主催NPO法人日本保全学会、日本設備管理学会
会期 2010/01/18~2020/01/19
会場
東京大学浅野キャンパス 武田先端知ビル 武田ホール
東京都文京区弥生2-11-16
実行委員会 実行委員長:野本 敏治(溶接接合工学振興会)
副委員長:川合 忠雄(大阪市立大学)、鈴木 俊一(東京電力)
幹 事 :片山 博(早稲田大学)、鳥居塚 崇(日本設備管理学会)、出町 和之(東京大学)
協賛 (社)日本機械学会、(社)日本材料学会、日本AEM学会、(社)日本非破壊検査協会、(社)日本原子力学会、(財)エンジニアリング振興協会、(社)溶接学会、(社)土木学会、(社)日本航空宇宙学会、(社)計測自動制御学会、(NPO)ヒューマンインターフェース学会、システム制御情報学会 (社)腐食防食学会、(社)日本溶接協会、(社)火力原子力発電技術協会、(社)日本原子力技術協会、(財)発電設備技術検査協会、(社)日本鉄鋼協会、(社)日本非破壊検査工業会、(社)日本プラントメインテナンス協会、日本応用数理学会、(社)日本電気協会、(独)日本原子力研究開発機構、(社)化学工学会、(社)石油学会、(社)日本建築学会、(社)日本トライボロジー学会(順不同)