日本保全学会
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第2回 公開講座「今、エネルギーを考える」のご報告


 東北大学 流体科学研究所主催、日本保全学会 東北・北海道支部共催の第2回公開講座「今、エネルギーを考える」が、11月7日(土)に東北大学 片平キャンパスにて開催され、盛況の内に終了いたしました。ご講演者ならびにご来場頂いた参加者の皆様、またご尽力賜りました関係者の皆様へ、心より御礼申し上げます。

  本講座は、エネルギー問題を多面的な視座から見直し、あらためて日本のエネルギー政策を考えていただくことを目的とし、第2回目となる今回は、鮮やかな紅葉を迎えた晩秋の仙台で100名の参加者にご来場いただいての開催となりました。  

<東北大学片平さくらホール>
<開会の挨拶:
東北大学 高木敏行教授>

 第一部では、「エネルギー・経済政策を考える」をテーマにNPO法人 パブリック・アウトリーチ上席研究員 諸葛 宗男氏による講演と、東北大学 高橋 信教授をコーディネータとして質疑応答が行われました。
 諸葛氏からは、2006年から東大特任教授として原子力法制研究会を立上げ原子力安全規制の在り方を検討し、2011年の事故を機にその検討結果を含めた法改正が行われた経緯について紹介があり、その上で、福島第一原子力発電所の事故を受けて明らかとなった、これまでの安全規制の問題点についての解説がありました。安全規制の現状についての分析では、「安全規制体制は,3条委員会による独立性確保,ノンリターンルールと独立行政法人原子力基盤機構(JNES)の統合による専門性強化がなされ、原子力防災会議の新設や原子力防災対策指針の全面改訂など原子力防災対策も強化された」と評価し、原子力安全・保安院時代に行ったストレステストの結果からは、停電耐力は146倍,津波耐力は3.4倍,冷却源喪失時の炉心冷却継続可能時間は76.5倍,耐震強度は1.7倍と算出される、との成果を紹介されました。一方で、原子力規制委員会に対しては、断層の判断基準の明確化や、どれだけ安全になったか国民に向け説明責任を果たす必要性について指摘されました。

諸葛 宗男氏 ご講演の様子
質疑応答の様子

 第二部では、「放射能汚染と環境保全を考える」をテーマに、東北大学 石井 慶造教授による講演と、福島大学 小沢 喜仁教授をコーディネータとして質疑応答が行われました。
 石井教授からは、東北大学では、福島第一原子力発電所事故直後の2012年から、生活環境早期復旧技術研究センターを設立し、環境モニタリング、食品汚染検査等を実施しており、その活動の中で土壌の除染等に取組んできた旨紹介がありました。
 その事例として、2011年4月に実施された福島市の保育園の園庭における除染活動について紹介され「園庭の表層5mmの土を集め、水を加えて攪拌し、上澄み液を取り去った土は、放射能が1/4になり、それを繰り返すことで土は園庭に戻せる程度まで線量レベルが下がった。泥水の方にはセシウムが存在し、その泥水を水と粘土に分けると汚染物質としては粘土のみとなり、粘土を乾燥させ圧縮することにより体積は8/100に減容された。現在は更なる減容化を目指し、粘土とセシウムの吸着について詳しく調査することとし、水田、畑、山の粘土について分析を実施している。」と話されました。また「汚染物質は粘土粒子の表面に付着しているのではないかと仮定し、深さに着目し調査を実施した。その結果、粘土の表層から10μmまでの深さに吸着していることを確認し、表層10μmの殻破砕と分級による減容化が可能と考えている。」との報告がなされました。続く質疑応答においては、除染に関して行われている事実を正確に伝える重要性について指摘され、今後も減容化研究など腰を落ち着けて取り組んでいけばうまくいくのではないか、との見通しを述べられました。

<石井慶造教授 ご講演の様子>
<質疑応答の様子>

閉会にあたり、東北大学 渡邉 豊教授より、講師及び参加者の皆様への感謝の辞が述べられ「質疑応答の中で話題になった、原子力基本法の総則の“人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする”は、講演されたお二人の先生方がまさに実行されていることである。主催である流体研究所、共催である保全学会東北・北海道支部に所属する研究者・技術者はそれぞれの専門分野で努力しているところであるが、最終的には原子力安全の高度化を通じて、人類の福祉向上と生活水準の向上に寄与することを目的にやっているのだな、ということを改めて確認する良い機会になった。」と話されました。

講演の概要質疑応答および資料( 講演1講演2 )はこちらよりダウンロードできます。