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原子力発電所 保全の現状と今後の在り方について

発 行:2006年8月
定 価:5,000円

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まえがき

我が国の原子力発電設備に対する規制による検査方式は時代とともに変化してきた。第一世代としてハード中心の定期検査があり、第二世代の検査として第一世代の検査に加えて事業者の体制や組織に関する審査と保安規定の遵守に関する検査が追加され、平成15年10月に法定化され現在に至っている。

規制による検査と事業者が行う保全はコインの裏表である。現在電力を安全に供給している保全が高経年化に対しても有効であるかどうか、現状保全の高度化を計ることでより効果的な高経年化対策が図れないかどうか、重要な課題であるが、その場合にあっては、新しい保全政策の妥当性を検証できる規制による新たな検査方式が構築されることが必須の要件となる。

一方、検査はこのように進化しつつあるが、事業者の行う保全方式は長期に渡って変化はなく、海外の保全方式に比べてその硬直化が次第に顕在化してきた。例えば、原子炉の運転期間は13ヶ月と法定化されているが、この期間が13ヶ月である技術的根拠は薄弱で、西欧諸国にはこのような固定的な考えは微塵もないと言ってよいであろう。運転期間は、適正化された保全方式の中で、科学的合理的に決められるのが当然である。

保全が、予防的なアプローチに加えて故障予知的なアプローチを導入することで、原子力発電所の安全性が高まるであろうことは、種々の検討から明らかである。これは、各種機器の状態を監視する技術と呼ばれ、外国の原子力発電所はもとより我が国の他産業においても積極的に導入されている技術である。このような有力な技術を活用しながら、保全と検査を合理化し近代化していくことは社会の要請であるといっても過言ではあるまい。

原子力発電所には膨大な機器が存在し必要な機能を効果的に果たしているが、それらの機器はさまざまな技術的個性を有しており、単一的な分解点検を定期的に実施することで高経年化炉の健全性を充分なレベルに維持できるかどうか、慎重に検討する必要性がある。分解点検には優れた点もあるが、逆に故障率を増大させるという欠点もあるので、画一的に適用するといった従来の保全は改善されてしかるべきであろう。

機器の分解点検と状態監視を最適に組み合わせて行う保全政策を採用すれば、現在の固定化された運転期間は非科学的であり、リスクを考慮した信頼性重視保全の適用に絡めて、運転期間は柔軟で事業者の裁量に任せるべきである。

保全がこのように合理的な姿を求めて進展しようとするとき、これが安全性を確実に高めるものであることを確認する検査とはいかなるものであろうか。検査が第一世代、第二世代と進化してきたことを踏まえれば、現在原子力安全保安院で検討されている新しい検査のあり方は第三世代の検査に位置づけられ、その真髄は、事業者の保全活動の総合評価と国民に対する説明責任、問題点発掘型の検査による設備の安全性向上、随所でPDCA活動を適用することによる継続的改善活動、の実施にある。これらは、有効な原子力安全行政と近代化された保全方式の観点から広く歓迎されるべきものと考える。

平成18年のはじめに、日本保全学会は(独)原子力安全基盤機構から、課題「保全方式の妥当性に関する調査・検討」を委託された。日本保全学会は委託に応えるべく、委員会を組織し、平成18年2月~5月の4ヶ月間に渡って議論を行った。その成果は、報告書として原子力安全基盤機構に提出されている。

委員各位の熱意ある努力の結果、短期間の活動であったにも関わらず、報告書の内容は大変充実したものになったと自負している。また、その内容は、多くの保全関係者にとって有益であり、かつ時宜を得たものであると考えている。

このような背景の下、本書は当該報告書より議論の本質に関わる部分について、世の中に広く普及することを目的として、再編集・取り纏めを行ったものである。

日本保全学会は、従来から保全の学術的体系化の構築を目指し、その帰結として保全の近代化を早期に図るべきだと主張してきた。本書が今後着実に進むであろう保全と検査の進化に対していささかでも貢献できれば幸甚である。また、本書を手にした読者諸兄にいくらかでも有益な情報を提供できれば、これに勝る喜びは無い。

平成18年6月

宮 健三
日本保全学会会長

目 次

1.現状と今後その変遷

1.1 保全方式の種類
1.1.1 時間基準保全
1.1.2 状態基準保全
1.1.3 事後保全
1.2 信頼性重視保全(RCM)の誕生
1.2.1 歴史的背景
1.2.2 バスタブカーブの過信
1.2.3 新知見
1.3 伝統的RCMプロセス
1.3.1 定義
1.3.2 7つの基本設問
1.3.3 故障モード影響解析(FMEA)
1.3.4 RCM決定ダイアグラム
1.3.5 先見的保全タスクの選択
1.3.6 合理化手法の発達
1.4 合理化RCMプロセス
1.4.1 重要度評価
1.4.2 保全項目・周期の設定

2. 状態監視技術の必要性

2.1 状態監視保全技術の生まれた背景
2.1.1 運転時間に関係した故障
2.1.2 運転時間に関係しない故障
2.2 潜在故障と状態基準保全
2.2.1 P-F曲線
2.2.2 PF間隔
2.2.3 正味PF間隔
2.3 状態監視技術の種類と適用性
2.4 状態監視技術適用上の課題

3. 状態監視技術の開発・適用状況

3.1 状態監視技術に関する文献調査結果
3.1.1 序
3.1.2 振動解析
3.1.3 油分析
3.1.4 アコースティック・エミッション ( AE )
3.1.5 赤外線サーモグラフィー
3.1.6 モータ電流兆候解析
3.1.7 ルースパーツモニタリング
3.1.8 ニュートロンノイズモニタリング
3.1.9 その他の文献抄録
3.2 米国原子力プラントにおける適用状況
3.2.1 概要
3.2.2 米国原子力発電所の取組み
3.2.3 事例検討
3.2.4 まとめ
3.3 国内原子力プラントにおける適用状況
3.3.1 はじめに
3.3.2 国内原子力プラントの状態監視技術の適用状況
3.3.3 国内原子力プラントの状態監視技術の適用拡大
3.4 国内他産業における適用状況
3.4.1 航空機産業
3.4.2 鉄鋼業
3.4.3 化学工業
3.5 状態基準保全適用のための研究開発項目

4. 保全プログラムの有効性向上と規制による検査の在り方

4.1 現状検査(定期事業者検査、定期安全管理審査、保安検査)の評価と改善
4.1.1 検査制度見直し(平成15年10月)の概要
4.1.2 新検査制度の運用実績
4.1.3 新検査制度の運用状況
4.1.4 検査制度運用改善プロジェクトチームの活動
4.1.5 現状検査制度の改善
4.2 保守管理の現状評価と更なる向上への取り組み
4.2.1 保守管理の現状評価
4.2.2 更なる向上への取り組み
4.3 米国における事業者の活動と規制による検査の状況
4.3.1 米国原子力規制委員会の規制検査(ROP)の概要
4.3.2 事業者の保守管理の有効性確認に関するNRCの規制
4.4 わが国における望ましい規制による検査の在り方
4.4.1 基本的な考え方
4.4.2 PDCAマトリクスによる現状の分析
4.4.3 制度のPDCA
4.4.4 事業者による保全プログラム向上の望ましい取り組みについて
4.4.5 規制による望ましい検査の在り方
4.4.6 今後の課題

5. 総合考察

添付資料

1.RCM関連資料
2.状態監視保全技術関連文献の抄録
3. 「アベイラビリティと信頼性の確保について」(NUMARC93-01 12章より)
4.米国原子力プラントに使われる状態監視技術の例
5.米国原子力発電所状態監視プログラムの例
6.国内原子力発電所における振動分析、潤滑油分析の適用状況 調査結果
7.「検査の在り方に関する検討会」保守管理検査WG(H18.4.27)発表資料
8.「Risk-Informed and Performance-Based Regulation」
9.PDCAマトリクス

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